今回は、自分が解説をする『体操JAPAN CUP 2010』が東京体育館で7月3日(土)フジテレビ放送13:30~、4日(日)フジテレビ放送1:30~と行われ、10月には『世界体操選手権2010inオランダ』もあるということで、皆さんに世界トップレベルである体操競技を知ってもらいたいと思い男子体操のルールをお伝えしていきたいと思います!

今現在のルール(2009年版)はどうなっているのでしょうか?

演技価値点Difficulty Score ⇒『Dスコア』 + 実施点Execution Score ⇒『Eスコア』

簡単に言えば
『どれだけ凄い技をしているか』 + 『どれだけ綺麗な演技をしているか』 です。
選手に求められることは難度の高い技を完璧に、そして美しく行うことです。


では、演技価値点Difficulty score ⇒『Dスコア』 とはどういったものでしょうか?
・一つ一つの技にはA~Gまでの難度がつけられ加点が貰えます。
・それぞれの種目には5つの条件があり、その条件を満たすと各0.5の加点(グループ加点)が貰えます。
・ゆかと鉄棒に限り、組み合わせ加点があります(難しい技を連続することによって貰える加点)。

A難度⇒0.1の加点
体操教室でも行っている『逆立ち』はA難度です。0.1の加点!
皆さんのよく知っている『バクテン』もA難度なんですね~。
『逆立ち』と『バクテン』は同じ難度です。
鉄棒では、『け上がり』『大車輪』がA難度です。

B難度⇒0.2の加点
つり輪での『十字懸垂』がB難度です。
かなり頑張っているのに0.2の加点しかくれません!

C難度⇒0.3の加点
ゆかでの『2回宙返り』がC難度です。

D難度⇒0.4の加点
鉄棒での『コバチ』←僕もアテネオリンピックで使っていた技です。
平行棒での『モリスエ』←クラシアンのCMに出ている森末慎二さんの技です。

E難度⇒0.5の加点
鉄棒でのコバチで体を伸ばして『伸身コバチ』がE難度です。
アテネオリンピックの金メダルを決めた鉄棒での‘伸身新月面の描く放物線は栄光への架け橋だー’もE難度です!

F難度⇒0.6の加点
平行棒での『タナカ』←僕の先輩である田中光さんの技です。
鉄棒での『コールマン』

G難度⇒0.7の加点
ゆかで『3回宙返り』←後ろに3回まわればG難度です。
鉄棒での『伸身コールマン』も最高難度Gです。


選手は1つの種目で10個の技が出来ます。たとえ20個技をやったとしても10個分しか数えてくれません。
なので、極端に言えば10個の技全てがG難度で構成出来れば最高です。(←10個もG難度はありませんが…)
出来るだけ難度の高い技を10個そろえて演技を構成します。


しかし!
そうなると今度は『技が出来ればいいのかー』ということになってしまいます。
そうではありません。
演技価値点Difficulty Score ⇒『Dスコア』に続いて

実施点、Execution Score ⇒『Eスコア』があります。
日本の体操で評価されているところは、この『Eスコア』です。世界に誇れる美しさです。

これは、演技の「美しさ」「正確さ」を評価するものです。
・つま先が伸びていなかったり
・ひざが曲がっていたり
・落下したり
・着地で動いたり
・尻もちをついたり
これらには『0.1~1.0』までの減点がされます。
■小欠点⇒「-0.1」
■中欠点⇒「-0.3」
■大欠点⇒「-0.5」

例えば、着地で動いてしまいます。
肩幅以内の歩幅で抑えた⇒「-0.1」
肩幅以上の歩幅を出してしまった⇒「-0.3」
転んでしまった⇒「-1.0」

減点項目には『静止時間不足』というのもあります。
静止時間は2秒です(3秒止めても4秒止めても一緒です。)
つり輪の力技や倒立で静止する技は、
2秒未満で⇒「-0.3」
静止しない⇒「-0.5」さらに難度も認められない。←これは最悪です。

選手がつり輪で「十字懸垂」をしたとします。
緊張からか全く止まらなかった。
十字懸垂はB難度で「0.2」の加点が貰えるはず。
これがどうなるかというと、
まず静止しなかったということで「-0.5」減点、更には難度も認められないので本来B難度で貰える「0.2」の加点が貰えず…
結果⇒「-0.7」の損をすることになってしまいます。
‘やらない方が良かった…’ということになります。

選手は常に数字との戦い!
たとえ失敗のリスクを背負って最高難度であるG難度(+0.7)に挑戦しても、完成度が低くで(-0.3)の減点をされたら結果的には+0.4だった…ということになります。
これだと初めからリスクの少ないD難度(+0.4)で良かったんじゃないか…と考えてしまったり。

大切なことは『Dスコア』の加点と『Eスコア』の減点を天秤にかけ自分にとっての完璧なバランスのとれた演技構成を考えること。
演技構成を考える能力が実は結構重要。これは戦略です。

※これらの評価は審判に委ねられるので「-0.1」と評価する審判もいれば、「-0.3」と評価する審判もいるのです。
誰が見ても文句の言えない演技をすることが超一流です。



参考までに減点っていったいどんなことでされるのか、減点項目をズラッと書いてみましょう。


~美的・実施欠点による減点~

・あいまいな姿勢(かかえ込み、屈伸、伸身)⇒0.1~0.5の減点
・手や握りの手の位置を調整、修正する(毎回)⇒0.1の減点
・倒立で歩く、またはとぶ(一歩につき)⇒0.1の減点
・ゆか、マット、または器具に触れる⇒0.3の減点
・ゆか、マット、または器具にぶつかる⇒0.5の減点
・演技中の選手が補助者に触れる⇒0.3の減点
・落下なしに演技を中断する⇒0.5の減点
・腕、脚をまげる、脚を開く⇒0.1~0.5の減点
・終末姿勢の姿勢不良、修正⇒0.1~0.5の減点
・宙返りでの脚の開き⇒0.1~0.3の減点
・着地で脚を開く⇒0.1~0.3の減点
・着地でぐらつく、小さく足をずらず、手を回す⇒0.1の減点
・不安定な着地⇒0.1~0.5の減点
・着地で転倒する⇒1.0の減点
・足からの着地がみられない⇒1.0の減点(難度不認定)
・無価値な開脚⇒0.3の減点
・その他の美的欠点⇒0.1~0.5の減点


~技術的欠点~

・振動から倒立、倒立経過、旋回技の逸脱⇒0.1~0.5(難度不認定)の減点
・正しい静止姿勢からの角度の逸脱⇒0.1~0.5(難度不認定)の減点
・角度逸脱の減点のある静止技からの押し上げ⇒0.1~0.5の減点
・ひねり不足⇒0.1~0.5(難度不認定)の減点
・宙返りの高さ不足、手放し技などの大きさ不足⇒0.1~0.3の減点
・余分な手をつく⇒0.1の減点
・力技を振動で、振動技を力で行う⇒0.1~0.5の減点
・静止時間不足⇒0.3~0.5(難度不認定)の減点
・上昇運動が途切れる⇒0.1~0.5の減点
・静止技、力技において2回以上試みる⇒0.3~0.5の減点
・倒立でぐらつく、または倒れる⇒0.3~0.5の減点
・落下、器械上に倒れる⇒1.0の減点
・中間振動、または無価値な振り下ろし⇒0.3~0.5の減点
・補助者によって技の実施を助ける⇒1.0の減点(難度不認定)
・体を伸ばす準備のない着地⇒0.1~0.3の減点
・その他の技術欠点⇒0.1~0.5の減点

審判はこれらの項目(種目によって更に項目がある)に沿って減点をしています。
選手もこれらを意識して練習をしています。



では、『体操JAPAN CUP 2010』『世界体操選手権2010inオランダ』に出場する選手の演技構成を見てみましょう!!

■ゆか
内村航平選手

①後方1回半ひねり~②バンローン  ⇒C難度(0.3)+D難度(0.4)
③前方1回ひねり~④前方2回ひねり  ⇒C難度(0.3)+D難度(0.4)
⑤ルドルフ  ⇒E難度(0.5)
⑥後方2回半ひねり~⑦前方1回半ひねり  ⇒D難度(0.4)+C難度(0.3)
⑧フェドルチェンコ  ⇒C難度(0.3)
⑨トーマス  ⇒D難度(0.4)
⑩後方3回ひねり  ⇒D難度(0.4)

難度点3.7 + 組み合わせ加点0.3 + グループ加点2.5
演技価値点Difficulty score ⇒『Dスコア』 6.5!!

こうしてみると全てがC難度以上だということ。組み合わせ加点を3つも取っていること。
素晴らしいですね!

■あん馬
小林研也選手

①セアひねり倒立  ⇒D難度(0.4)
②後ろ移動(2/3)  ⇒B難度(0.2)
③前とび移動  ⇒D難度(0.4)
④後ろ移動  ⇒D難度(0.4)
⑤Eフロップ  ⇒E難度(0.5)
⑥Dコンバイン  ⇒D難度(0.4)
⑦ウ・グォニアン  ⇒E難度(0.5)
⑧フェドルチェンコ  ⇒D難度(0.4)
⑨一把手上縦向き旋回  ⇒B難度(0.2)
⑩シュテクリA3/3移動下り  ⇒D難度(0.4)

難度点3.7 + グループ加点2.5
演技価値点Difficulty score ⇒『Dスコア』 6.2!!

小林選手は旋回のスピードがあって、体線も綺麗なので楽しみですね~

■つり輪
山室光史選手

①後転中水平  ⇒F難度(0.6)
②背面十字懸垂  ⇒D難度(0.4)
③引き上げ十字倒立  ⇒E難度(0.5)
④振り上がり十字倒立  ⇒D難度(0.4)
⑤振り上がり倒立  ⇒C難度(0.3)
⑥屈伸ヤマワキ  ⇒D難度(0.4)
⑦振り上がり中水平  ⇒E難度(0.5)
⑧後転十字懸垂  ⇒D難度(0.4)
⑨ほん転倒立  ⇒C難度(0.3)
⑩伸身ムーンサルト  ⇒D難度(0.4)

難度点4.2 + グループ加点2.5
演技価値点Difficulty score ⇒『Dスコア』 6.7!!

半分以上が力技なんですね。これぞつり輪!といった素晴らしい演技構成です。

■跳馬
山室光史選手

ロペス(伸身カサマツとび2回ひねり)

演技価値点Difficulty score ⇒『Dスコア』 7.0!!

現在の最高はDスコア7.2なので山室選手の7.0は素晴らしいです!
ちなみに体育でも行う技で「前転とび」のDスコアは3.0です。2倍以上の凄さです!

■平行棒
田中和仁選手

①棒下1回ひねり倒立  ⇒E難度(0.5)
②アームモリスエ  ⇒E難度(0.5)
③棒下ひねり倒立  ⇒E難度(0.5)
④棒下倒立  ⇒D難度(0.4)
⑤屈伸ベーレ  ⇒E難度(0.5)
⑥モリスエ  ⇒D難度(0.4)
⑦ツイスト  ⇒C難度(0.3)
⑧Dツイスト  ⇒D難度(0.4)
⑨単棒閉脚倒立  ⇒C難度(0.3)
⑩後方屈伸2回宙返り  ⇒D難度(0.4)

難度点4.2 + グループ加点2.5
演技価値点Difficulty score ⇒『Dスコア』 6.7!!

田中選手の平行棒は、演技の流れ・リズムが素晴らしいです。静と動の表現が魅力です。
Dスコアも6.7と高いので世界で戦えます!

■鉄棒
植松鉱治選手

①伸身コールマン  ⇒G難度(0.7)
②リバルコ  ⇒D難度(0.4)
③アドラーひねり~④コバチ  ⇒D難度(0.4)+ D難度(0.4)
⑤コールマン  ⇒F難度(0.6)
⑥アドラー1回ひねり片逆手~⑦伸身コスミック  ⇒D難度(0.4)+ D難度(0.4)
⑧エンドー1回ひねり大逆手  ⇒D難度(0.4)
⑨アドラー両手持ちかえ  ⇒D難度(0.4)
⑩伸身新月面  ⇒E難度(0.5)

難度点4.6 + 組み合わせ加点0.4 + グループ加点2.5
演技価値点Difficulty score ⇒『Dスコア』 7.5!!

この演技構成は凄すぎます。D難度以上しか入っていない!そんな中で組み合わせ加点も2つ取っている。Dスコア7.5は驚異的だと思います!世界でも圧倒的なのではないでしょうか。
楽しみです!!


以上が日本のトップの演技構成です。

昨年の世界チャンピオンである内村航平選手をエースに
『体操JAPAN CUP 2010』では、世界一をかけてこの選手たちが戦います。『世界体操選手権2010inオランダ』では更に新生の中島立貴選手が加わって素晴らしい戦いを見せてくれると思います。
2012年のロンドンオリンピックに向けて日本体操は大注目です。

是非、今日のスタッフブログをご参考に楽しんで下さい!
解りやすい解説を僕も頑張ります。                       米田功