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スタッフブログ

2024.07.03
『藤井聡太は、こう考える』
こんにちは、小川です。あと少しでパリオリンピックですね。体操の日本代表決定競技会(NHK杯)ではとても緊張した場面で感動の演技をたくさん見ることができました。厳しい選考会を勝ち抜き日本代表に選ばれた選手たちは現在合宿で最終調整をしていると思います。オリンピック本番では自信を持って堂々と演技をしてもらいたいと思います。
今回私は杉本昌隆さんの「藤井聡太は、こう考える」という本を読ませていただきました。杉本さんはプロ棋士であり藤井聡太さんの師匠としても知られている方です。藤井聡太さんといえば将棋界初となる八大タイトル全冠制覇を達成し、現在将棋界で最も注目されている方です。本の中では藤井聡太さんとの日々の関わりの中で感じている「構想力」「集中力」「平常心」「探究心」について書かれています。本の中で共感できる文章を抜粋して紹介したいと思います。
■構想力
一般的に構想力とは、勝つためにどのような段取りを組んでいくのか、その工程を考える力を思い浮かべます。しかし藤井の構想力とは単純に「勝つ」ことだけを目的としたものではありません。最近のインタビューでは「面白い将棋を指す、これからは楽しんでいただけるような将棋を」と言っていました。根底にずっとあるのは、最善手を追求する=いい将棋を指すことです。そのための構想です。勝つための構想とは少し違います。つまり藤井の「構想力」とは一局ごとの勝ち負けへの意識ではなく、人に感動を与える将棋を残したいというものなのです。

→勝負の世界では常に勝つことを意識します。勝つためのプランをどう実践していくかが勝敗の鍵になり、そのプランを考える時点で勝敗が見える部分もおおいにあると思います。ただ、勝つことだけにこだわり過ぎてしまうと、うまくいかない場面での対応ができないことが多々あります。藤井さんの強さは、勝つことにこだわるだけではなく、どんな場面においても自分自身の最高の形を求めるところにあるのだと思いました。


■集中力
藤井は集中力についてどのように考えているのでしょうか?「その対象のことを好きになったり、あるいはそれを楽しめるように工夫することが、結果的に集中して取り組むことにも繋がるのかなという風に思います」と述べています。つまり好きなことを見つけ、集中する体験を少しずつ増やしていくことが大切だということなのでしょう。藤井は集中力を意識しているのではなく、大好きな将棋と自分を一体化させているのでしょう。つまり集中力とは、集中することを意識しなくなった時、初めて訪れるものなのです。

→将棋の世界では集中力が途切れた時にミスをしてしまい、読みを間違えてしまうことがあるそうです。その一手で勝敗が決まってしまう世界では一瞬も集中力を切らないことが求められるように思いますが、藤井さんは『集中することを意識しなくなった時』に訪れる集中の中で勝負しているのだと感じました。
日々の研究の時から集中力を意識せず、楽しむこと、工夫することが自然と実践できる状態を大切にしていること、やはり根底にあるものはどの競技においても目の前のことをどれだけ楽しむことができるかが重要なのだと思いました。


■平常心
緊張を避けようと思えば思うほど緊張してしまうのが人間心理です。緊張は「勝ちたい」「成功したい」という意識の表れです。何も思わないのであれば緊張することもありません。緊張やプレッシャーを前向きに捉えることができれば、成功へのエネルギーに変えることができます。藤井でもプレッシャーや緊張を感じる。つまり、平常心とは、向上したいという思いから生まれる心の揺れを、そのままプラスに感じられる時に生まれるものなのです。プラスに思えるようにするためには、経験の積み重ねが必要であり、そこにはそれまでに培ってきた自信が大きく影響するのです。

→テレビに映る藤井さんは話す言葉も丁寧で常に冷静な感じからあまりプレッシャーを感じていないのかと思っていましたが、その姿勢は経験の積み重ねから生まれた自信なのだと気づきました。緊張した場面でも普段と同じパフォーマンスを発揮するためには日々の積み重ねが重要となります。緊張を成功へのエネルギーに変えるためには練習の中で自信をつけるしかないとあらためて感じました。


■探究心
藤井は「互角や有利な局面では最善を追求することが勝ちに近づくので、研究や探究の側面が大きくなる」と述べ、「不利な局面になると勝負師の面が出てくる」と語っています。また「芸術性や独創性についてはあまり意識しないが、指した結果として自分らしさを感じていただけるようになれば」と話しています。小学四年生の時に「名人をこす」と小学校の文集に書いていたことは有名な話です。今、その夢が現実になりつつあるとしても、彼の探究はまだ続いています。

→将棋の世界で数々の記録を塗り替えている藤井さんでも才能を開花させるためにいろいろな努力をされているのだと感じました。幼い頃に描いた夢を叶えるために常に研究をし続けてきた結果、現在の姿があるのだと思いました。そしてまだまだ探究は続いている。対局相手によって戦略や局面が違うと考えると、探究は永遠なのかなと感じました。体操競技でも、その日の体調や体の状態で日々取り組みは変わるところがあります。その時々で変化を探究すること、変わらない術を探究すること、探究する心は同じだと思いました。

本の中では「才能とは、努力を続けられること」と書かれています。将棋と体操では勝負する世界が違いますが、共通する部分が多くあります。これから選手を目指す子どもたちには、まず体操を心から好きになる!毎日を楽しむ!藤井さんのように心と体と頭の成長を考え、そして感動を与えられる選手を目指してほしいと思います。