みなさんこんにちは。
僕は今、JOC(日本オリンピック委員会)のコーチアカデミーという研修を受けています。そこでは、コーチング、マネジメント、言語技術、医科学サポート、英会話、など指導者として大切な様々な分野を学ばせてもらっています。先日は広瀬一郎先生がコーチングに関して講義をしてくださいました。“スポーツマンシップ”について、“スポーツとは何か”についてです。
とても興味深かったのでスタッフブログでご紹介させていただきます。
「新しいスポーツマンシップの教科書」 著:広瀬一郎氏
まず、皆さんはスポーツマンシップという言葉を知っているとは思いますが、スポーツマンシップって何ですか?と聞かれたらお答えできるでしょうか?
スポーツマンシップというと、フェアプレーの精神や、全力で頑張ることなどの漠然としたイメージはありますが、実際に考えてみると確かに曖昧にしか考えたことがありませんでした…。
「スポーツマンシップに則り正々堂々と戦うことを誓います」と宣言したことがありますが、先生からは、意味も理解していないことに則るってできるんですか?と問われ、ここで理解を深めていきたいと思います。
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★スポーツとは「運動を通じて競争を楽しむ真剣な遊び」のこと。
スポーツは人間が楽しむためのものなのです。
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スポーツは運動のことですが、ただの運動ではなく、
「ゲーム(game)をプレイ(play)する」という“play”という言葉に“遊ぶ”という意味が含まれているように、スポーツは「遊び(play)」なのだと書かれてあります。もちろんただの遊びではなく、勝敗をかける競争であり、真剣なゲームです。
「勝利を目指して競争すること」がスポーツの本質なので、スポーツとは競技を楽しむ真剣な遊びとなるのですね。
僕はこれを読んで“真剣に遊ぶ”これがキーワードのような気がしました。
先日インターネットで読んだ記事です。
~2014年世界一に輝いたレストランで働く唯一の日本人シェフ「僕より優秀な人はたくさんいるけど…」~ http://epmk.net/junichitakahashi/
にこんなことが書かれてありました。
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「もっと楽しく働いていいんだ!」っていうことですね。
(少し省略します)
それでも、相手が誰であろうと、人と会ったらまず握手して、「What’s up?(どう?元気?)」って気さくに話しかける。そういうことをみんなができるんです。なので職場はいつも本当にいい雰囲気で。仕込み中は厨房で音楽をかけながら調理するのは日常茶飯事だし、掃除の時なんかは、大音量にしてみんなダンスしながら床を掃いたり(笑)。
それに比べて、日本では仕事を楽しいと思ってはならない空気がなんとなくありますよね。きっと他の多くの職場にも言えることだと思います。でもデンマークに来てわかったんです。働くのを「楽しむ」ことと「真面目に」取り組むことは矛盾しない。どちらも両立できるし、むしろ相乗効果でもっと高い成果を生むんじゃないかって思うんです。
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“真剣に遊ぶ”
“「楽しむ」ことと「真面目に」取り組むことは矛盾しない”
これを指導者として、部下を持つ人として実現していきたいと思いました。
こういった感覚をもつだけでも、かなり考え方に幅が出てくるように思います。
どうしても真剣にやらせようと思えば思うほど、「遊ばしたらあかん」って考えがちなんですが、‘遊びという要素をふんだんに扱いながらそれを真剣にやらせる’ということができる指導者が一流なのかもしれません。
それではここで、本書にて紹介されていたスポーツが生まれた背景を少しお話しします。
スポーツは、近代になり一部の娯楽がスポーツ化されたものだと考えられているようです。スポーツ化されていくということなのですが、その特徴は「暴力」を抑制するということだったそうです。
「娯楽」 - 「暴力」 = 「スポーツ化」
とても興味深いですね。この本を読み、初めて知りました。
また、ラグビー校のトマス・アーノルド校長が、「手を使ってはいけない」「相手を蹴ってはいけない」などのルールをつくり、野蛮なものであったフットボールに、立派な振る舞いを身につけた文明人を育てるための教育的な要素を加え、「スポーツは紳士(ジェントルマン)を育てる場」にしようと考え、フェアプレーを貫き、立派な行いをすることが「スポーツ」だという考えが生まれ広まってきた。と説明が書かれてありました。
スポーツは“紳士(ジェントルマン)を育てる場”…そう考えると、挨拶や返事、振る舞いなど競技力向上以外にどんなことが必要かわかりやすいです。
「巨人軍は常に紳士たれ」は有名な言葉ですが、「スポーツマンは紳士たれ」ですね。
もう一つ、「スポーツ」と「体育」の違いもこの本で教えてくれています。
★将校を育てるスポーツ-------------------------------------
当時のビクトリア朝イングランド繁栄の鍵は、植民地経営でした。したがって、植民地経営にあたる人材を育てることは、パブリックスクール(13歳~18歳の子供を教育するイギリスの私立学校の中でもトップの10%を構成するエリート校の名称)の重要なテーマのひとつでした。
(少し省略します)
パブリックスクールでは、劣悪な環境でもたくましく生き抜く能力を養成することが期待されていました。
(少し省略します)
スポーツを通じて、「個人でリスクをとり判断できる屈強な人間」すなわち、植民地経営をするマネージャーあるいは「将校」を養成していたのです。
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★兵士を育てるかつての体育-------------------------------------
日本にスポーツを導入したのは、1885年伊藤博文内閣の下、初代文部大臣となった森有礼だと言われています。彼は、国民を育成するための国民教育に必要なのは「知育」「徳育」「体育」の3つだと考えました。そして、「体育」の領域を「スポーツ」に担わせることにし、学校教育に導入したのです。
明治政府にとっては富国強兵、つまり「国民」を生産するとともに、強兵を図るために「国民 = 兵士」の育成することが急務でした。「体育」は主として「兵士」を養成するために導入されたわけです。
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体育の授業では「前へならえ」「右向け右」と教えられるのも、相手を「敵」と呼んだりするのも、そういった教育の名残だそうです。
スポーツは判断する「将校」を育て、「体育」はその判断に従い、指示を正確に実行する「兵士」を養成すると書かれてありました。
僕たち体操クラブ求められている要素はスポーツの方だと思います。
「良い性格」「良い人」「乗りやすい人」「気取っていなくて、協力的な人」「フェア(潔い)な人」「公明正大な人」
SPORTという言葉には以上のような意味があります。
つまり、僕たちスポーツの指導者は“SPORT”“スポーツ”という意味を理解し、スポーツを通じて“人格者(good sport)”を育てなければいけないということです。
かなり長いスタッフブログになってしまってますが、最後に本書でも紹介されていたエピソードも紹介させてください!
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ボブスレー選手のスポーツマンシップ
1964年にオーストリアのインスブルックで開かれた冬季オリンピックの男子2人乗りボブスレー競技で、こんな出来事がありました。
トニー・ナッシュ選手とロビン・ディクソン選手のイギリスチームは、最終レースを前にしてスレッド(そり)のボルトが壊れてしまったのです。
この様子を見ていたのが、優勝候補の筆頭、イタリアチームの操縦士エウジョニオ・モンティ選手でした。彼は1950年代から60年代にかけて大活躍してボブスレーを人気競技に押し上げた伝説の選手です。
モンティ選手は迷うことなく、イギリスチームにスペアのボルトを貸しました。その結果、イギリスチームは歴史的な金メダルを獲得、一方のイタリアチームは銅メダルに終わってしまいます。
しかし、翌年、モンティ選手のスポーツマンシップをたたえ、「ピエール・ド・クーベルタン・フェアプレー賞」が贈られました。彼はこの賞の記念すべき初受賞者となったのです。
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どうでしょうか。
スポーツって素晴らしいですね!
こうした素晴らしいスポーツマンがスポーツの価値を高めてくれています。
この本の中で広瀬先生は、
スポーツマンシップとは、ひと言でいえば「尊重する(respect)」ことです。
そして、“尊重する”とは、あるものの意味や価値を理解し、それを大切に考えるということです。
と言われています。
新しいスポーツマンシップの教科書という本を読み、知ってほしいことを絞って文章にしましたが、ほんの一部しか紹介していないので、指導者の方は是非読んで勉強してください!
来年2016年にはリオデジャネイロオリンピック、その先の2020年は東京オリンピック。今後スポーツには更なる関心が集まってきます。そして、スポーツをさせたいと思うお父さんやお母さんも増えてくると思います。
そこには人間としての成長を期待されている部分も多いのではないでしょうか。
しっかりとそんな期待に応えられるよう、僕たち指導者は学び続けないといけません。
そして米田功体操クラブはこれまで以上に発展していきたいと思います。
米田 功