『自分の最高を引き出す考え方 スポーツ心理学博士が語る結果を出し続ける人の違い』
こんにちは、小川です。2023年のスポーツ界を振り返ってみるとバスケットボール、バレーボールのパリオリンピック出場権獲得、ラグビーワールドカップの日本代表の活躍、ボクシングの井上尚弥選手の2階級4団体統一王者などがありましたね。体操では世界選手権で男子団体優勝、橋本大輝選手が個人総合2連覇、女子はパリオリンピック出場権獲得がありました。大活躍のスポーツ界でしたがその中でもやはり野球のWBC優勝が最も印象深いのではないでしょうか。大谷翔平選手を中心に活躍する選手たちに心躍りました。特にメキシコ戦の8回2点差で負けている場面で大谷選手が「さぁ〜いくぞ〜準備して〜!」と笑顔でチームメイトを鼓舞している姿に感動すると同時に、追い込まれた場面でもプレッシャーを楽しんでいるような姿に驚愕しました。どのようなトレーニングを積み重ねることであの行動ができるのか、一流選手のメンタルを知りたいと思いました。
今回私はスポーツ心理学士の布施努さんの「自分の最高を引き出す考え方」という本を読ませていただきました。布施さんはスポーツ心理学士としてオリンピック選手や大学生、社会人野球チームなどにトレーニングを提供している方です。本の中ではパフォーマンスを向上させるスキルを6つに分けて説明をしています。
1.縦型比較思考
2.役割性格
3.ダブルゴール
4.CSバランス
5.獲得型思考
6.オートテリックパーソナリティ
この6つのスキルで印象に残った言葉を抜粋して紹介したいと思います。
■1.縦型比較思考(縦型比較と横型比較)
スポーツの世界でもビジネスの世界でも、誰かに負けたくない、周りの活動が気になるという思いは横型比較から生まれている考え方といえます。それに対し縦型比較は、比較する対象が周りではなく、なりたい将来の自分です。将来の最高の姿をイメージし、その最高の姿に対して現在の自分がどのような状態なのかを把握し、自分の最高の姿に近づくためにはどうしたらいいかを常に考える思考法です。世界で戦う一流のアスリートはコントロールできない相手などに意識を向けエネルギーを費やすのではなく、自分のコントロールできることに集中する。
■2.役割性格
①自分自身をしっかりと知る(見える化)
自己認識を「セルフ・アウェアネス」と呼びますが、これはメンタルスキルの中心をなし、理想のパフォーマンスを持続し、逆境における対処能力を高めるためには欠かすことができません。人は自分自身がわかっていることはコントロールできますが、自覚のないことはコントロールできていないことが多いのです。そして多くの場合、人は自分が思っている以上に自分のことを知りません。
②自分がコントロールできることを整理する
私たちがコントロールできるのは「今」だけです。未来や過去をコントロールできないのは至極当然のことですが、なかなかこの事実に基づいた行動をとることができません。過去や未来ではなく”今”また、環境ではなく”自分自身”だけが私たちにコントロールできるものです。
③なりたい自分像を演じる(俳優力)
強い選手は試合中に「演じるべき自分=役割性格」が明確で、その状況での台本の理解力や高い「演じるスキル」を持っている。強い選手ほど、こうありたいという選手としての像がしっかりしていて役割を演じている。練習はこういう態度で臨もう、ピンチのときはこう考えて、こうしようなどといった状況での考察が深く、しかもその役割をしっかり演じきれるというのです。
→日々の練習ではうまくいく時といかない時が必ずあります。どんな時でも自分の理想を追求する「縦型比較思考」で将来の自分を常に意識して自分自身をコントロールすることでその日の練習の質も変わることがわかりました。メキシコ戦の大谷翔平選手の声がけも相手にエネルギーを費やすのではなく「自分がやるべきことをやるだけ」と、自分をコントロールできているからこそできる行動だったのだと気づきました。
■3.ダブルゴール
「大きな目標」と「小さな目標」
大きな目標を達成するためには、たくさんの小さな目標が必要になります。小さな目標を以下に設定し、毎日をどう過ごしていくかの違いで、結果が大きく違ってきます。このように考えていくと、小さな目標を設定しそれを達成し続けていく道のりは生き方そのもの、人生そのものといえるでしょう。
「最高目標」と「最低目標」
次々と目標を達成していく選手たちは自分でコントロールできることとできないことの区別をし、自分でコントロールできることで最低目標を設定します。自分でコントロールできる最低目標をフォーカスすることで、その瞬間瞬間のパフォーマンスを上げ、良い結果を導く確率を高めていくのです。
■4.CSバランス
CSバランスのCはチャレンジ、Sはスキルです。このチャレンジとスキルのバランスを見ながら、「簡単にはできないけれどなんとか頑張ればギリギリできるかもしれないこと」「今、できるかもしれない精いっぱいのこと」という絶妙なポイントにその時々の目標を置いておくことが重要。
■5.獲得型思考
結果の明暗を分ける「獲得型」「防御型」
アスリートは試合で勝つために、試合中や練習、日常生活でもあらゆる思考を巡らせながら活動しています。その思考タイプは二つに分けることができ、一つは、勝つためにプレーする「獲得型」思考であり、もう一つは負けないようにプレーする「防御型」思考です。「獲得型」は「何かを手に入れる」ために行動するタイプの考え方で、意思決定が自動的で速く、チャレンジする意欲が強いのが特徴です。一方、「防御型」は「何かを失わない」ために行動するタイプの考え方で、意思決定に慎重で、そのため不安感が増し積極性が低下しがちです。トップアスリートの中でもさらにオリンピックのメダリストになるような選手や多くのスポーツで頂点に立つような選手は緊張感が高まってきたときに、違う考え方を発揮しています。それが「獲得型」思考なのです。
■6.オートテリックパーソナリティ
オートテリックパーソナリティとは、利益や報酬や評価といった外から与えられた目的のためでなく、自分が今行なっているその行為自体に喜びや楽しさを見出しやすい性格的特性のことを指します。自分がやることを自分で決める力を自己決定能力というのですが、スポーツでもビジネスでもパフォーマンスを高めるためには、この自己決定能力を向上させることが非常に重要になってきます。
「自己決定能力の5段階」
①誰かにいわれたから、やる
②やらないといけないから、やる
③重要だから、やる
④やりたいと思うから、やる
⑤楽しいから、やる
→この本で紹介されている一流選手たちに共通していることは、コントロールできる自分自身にしっかり焦点を当てていて、小さいことからやれることを見つけていき、結果大きな成功に繋がっているところです。スポーツの世界では必ず勝負の場面が訪れます。自分のベストを出すために日々の練習から色々なイメージを構築していくことでどんな場面でも自分がやるべきことに集中できるようになると思いました。また、誰かにいわれたからやるのではなく、楽しいからやる。スポーツの本来あるべき姿だと感じました。最初のスタートは誰でも楽しいから始まるはずです。それがそのうちやらされる。にならないように日々体操の楽しさを忘れないような声がけをしていきたいと思います。大事な試合の最終種目に向かう緊張した場面でも楽しむことができるような選手育成を目指していきたいと思います。