『Justice: What's the Right Thing to Do?』
こんにちは。スイミングスクールの荒井です。
今年の夏はすごく長く感じてしまいましたね。私だけでしょうか。
今回は人によって多少なりとも差があるであろう。「正義」というものに焦点を当ててみたいと思います。
先日電車に乗った際、優先席と呼ばれる所まで満席で、「本当に必要な人がいたならば、空くのかなー?」と漠然と考える機会がありました。普段、車で通っているのでなかなか優先席のことについて考えることは少なかったと思います。
そこで基準はどこなんだろう。と考えたのがきっかけでこの書籍に目が留まりましたのでご紹介致します。
私が取り上げたい書籍は、
「JUSTICE ~WHAT’S THE RIGHT THING TO DO?」です。
まずこの書籍についてですが、ハーバード大学でマイケル・サンデル氏が行った講義を基に具体的な事例を含め人々が持つ「正義」についての議題に向き合っているものです。
では、まず本書にも取り上げられている有名なトロッコ問題について考えてみましょう。
制御が効かないトロッコ。進む先には、5人の作業員がいます。進行方向を変えるレバーの前に立つあなた。レバーを引けば線路が切り替わり5人を救えますが、今度は切り替えた先にいる1人の作業員が犠牲になってしまいます。
さあ、あなたはレバーを引きますか?引きませんか?
それがあなたの「正義」です。
では、話を少し変えましょう。
制御が効かないトロッコ。進む先には、5人の作業員がいます。あなたは橋の上で見ています。横にはトロッコを完全に停止出来るほどの大男がいます。大男を突き落として線路に落とせば5人の命は助かります。
さあ、大男を突き落としますか。
また、話が変わります。
同じ状況で大男を突き落とそうとしている人がいます。あなたは止めますか?止めませんか?
どんな答えでもそれがあなたの今の「正義」です。
全てにおいて5人を助ける為に行動していますが、それはちょっと…と思った人も多いはずです。その揺らぎについて話しましょう。議論しましょう。がこの本のテーマです。
では、この本の中で私が教室に入った際に感じることを掻い摘んでご紹介致します。
●「社会の幸福度を最大化する選択こそ正義である」 功利主義
トロッコの話でおけば5人を助ける為に1人を犠牲にするものである。
スイミングで考えてみれば、クロールが得意な5人と平泳ぎが得意な1人としよう。
テストがあるクラスで「平泳ぎが苦手な子が多いから平泳ぎの練習を多くしよう。」というのは全体を見れば理に適っているかもしれないが、少数の平泳ぎが得意な子のクロールのレベルアップの機会を奪っているかもしれない。
このように、「社会全体の幸福度が増加するか、という指標による正義の判断は重大な欠陥が存在しており、危険な考え方だ。」と本書でものべている。
確かに全体ではレベルアップするだろうが、個人でみた際はどうであろうか。と考えさせられる内容である。
「10人がいたら10人のプログラム」 と言われることがあるが、まさにその通りで人によって「正義」は少しずつ微妙に違っているのである。
それぞれの個性、それぞれの得意なこと、苦手なこと
を見極め、伝えながら
根底にある「楽しむ」を感じてもらえるようなレッスンを今後も実施していければと思っています。
人生における正義とはなにかを問いかけ続けてくれる本だと思っていますので、興味がある方はご一読ください。
荒井 厚