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スタッフブログ

2026.06.03
『最高の戦略教科書 孫子』
こんにちは、米田真美です。
今回、私は守屋淳著『最高の戦略教科書 孫子』を読みました。
『孫子』は約二千五百年前に書かれた兵法書ですが、その内容は戦争だけに限らず、現代の仕事や組織運営、家庭、人間関係などにも通じる普遍的な知恵が詰まっていると感じました。
本書を読んで最も印象に残ったのは、「人は強みによって成功するが、その強みが行きすぎると自らを苦しめることがある」という考え方です。
『孫子』では、将に必要な資質として「智・信・仁・勇・厳」の五つを挙げています。しかし、それぞれの資質も度を超えると弱点へと変わります。
勇が強すぎれば無謀になり、自らを消耗させる。智が過ぎれば慎重になりすぎて行動できなくなる。厳しさが過ぎれば感情を刺激された時に冷静さを失う。信を重んじすぎれば挑発に反応してしまう。仁が過ぎれば相手を思いやるあまり抱え込み、自分自身が疲弊してしまいます。
私はこの部分を読みながら、自分自身のことを考えました。私を突き動かしている部分は責任感だと思っています。しかし、仕事や日常生活の中で問題が起こると、「自分が何とかしなければならない」と考え、一人で抱え込んでしまうことがあります。その結果、感情的になったり、疲れ切ってしまったりすることもあります。孫子は強みそのものを否定しているわけではありません。むしろ勝利は強みから生まれると考えています。ただし、その強みを制御できなければ、自分自身を苦しめることになるということです。私はこれまで「もっと頑張ること」が解決策だと考えて行動することが多々ありました。しかし『孫子』を読んで、「頑張ること」ではなく、「強みが最大限に活きる環境や仕組みを作ること」が重要なのだと気づかされました。

また、本書の中で特に重要だと感じたのが「五事」という考え方です。
五事とは、「道・天・地・将・法」の五つの要素を指します。
「道」は理念や目的の共有です。組織の全員が同じ方向を向いている状態を意味します。
「天」は時やタイミングです。今動くべきなのか、待つべきなのかを見極めることです。
「地」は環境や条件です。理想論ではなく、現実の状況を正しく理解することの大切さを示しています。
「将」はリーダーの資質です。智・信・仁・勇・厳のバランスが求められます。
「法」は組織運営やルール、役割分担です。誰が何を担当し、どのように管理するかを明確にすることです。

私は体操競技の指導者として日々選手育成に携わっていますが、この五事はスポーツの現場にもそのまま当てはまると感じました。どれだけ才能のある選手がいても、チーム全体が同じ目標を共有していなければ力はまとまりません。どれだけ高い技術を持っていても、怪我をしてしまえば結果を残すことはできません。また、役割分担や情報共有が不十分であれば、組織として最大限の力を発揮することはできません。私は現在、オリンピックを目指す選手たちの育成に携わっています。これまで私は「日々努力すること」「最後までやり切ること」「同じことを繰り返しできる力」が何よりも大切だと思っていました。しかし、勝つためには努力だけでは足りません。技術力、体力、精神力、怪我の予防、情報分析、サポート体制など、多くの要素が整って初めて結果につながります。もっと全体的に視野を広げていきたいと思いました。

『孫子』には「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」という有名な言葉があります。相手を知り、自分を知ることで勝率を高めるという意味です。これは競技スポーツにも当てはまります。世界で戦うためには、自分たちの強みや弱みを理解し、ライバルの状況を分析し、どこで勝負するのかを明確にする必要があります。

また、『孫子』は「勝てる条件を整えてから戦え」と繰り返し説いています。
戦うことそのものが目的ではありません。勝てる状態を作ることが目的なのです。すべての戦いに挑むのではなく、戦うべきかどうかを見極めること。十分な準備を行い、勝率を高めた状態で勝負すること。私はこれまで、どちらかと言えば自己ベスト、選手のベストに目を向けて指導してきました。しかし、今回「勝てる条件を整える」という考え方に強く共感しました。さらに、組織運営においても同じことが言えます。優秀な人材が集まっていても、理念が共有されていなければ力は分散します。役割や責任が曖昧であれば、組織は機能しません。指導者も選手も個々の強みを伸ばし役割を全うすること、私自身も自分が頑張ることで問題を解決しようとすることが多くありました。しかし『孫子』を読んで、個人の頑張りだけではなく、組織全体が力を発揮できる環境や仕組みを整えることこそがリーダーの役割なのだと学びました。

今回『孫子』を読んで学んだことは、「勝利は偶然ではなく、準備と条件設計によって生み出される」ということです。選手育成も組織運営も家庭も同じです。気合いや根性だけに頼るのではなく、人、情報、環境、仕組みを整えながら勝率を高めていくことが重要です。

今後は、自分の責任感という強みを活かしながらも抱え込み過ぎず、感情に振り回されることなく、人と組織が力を発揮できる環境づくりを意識していきたいと思います。そして選手たちが大きな目標に向かって成長できるよう、私自身も学び続ける指導者でありたいと思います。